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ローヌ川



アパーシャがヴェノムと行動を共にする様になってから、既に二日が経っていた。
その間、どうやって居場所を嗅ぎ付けたのか、賞金稼ぎ達が幾度か襲撃を仕掛けてきたが、
最初に約束したとおり、彼らの相手は全てヴェノムが引き受けてくれた。
そして敵が一人であろうと複数であろうと、これと言って苦戦する様子もなく、悉く退けてきたのだ。

それよりも、アパーシャが興味を惹かれていたのは、ヴェノムの戦い方である。

彼はいざ戦闘となると、常に持ち歩いている大きめのケースから、
ビリヤードのキューを取り出して、それを武器とする。
それは単なる打撃武器ではなく、掌程度の大きさの白いボールをいくつも生成して、そこら中に漂わせ、
あたかもビリヤードをするかの如く、それらを相手目掛けて弾いて飛ばすのにも利用していた。

弾かれたボールは別のボールとぶつかり合い、起動が不規則に変化して相手に襲い掛かる。
あらぬ方向へ飛んでいった様に見えても、後方にあったボールと衝突し、予想も付かないところから飛んでくる。
かと思えばヴェノム自身も突如姿を消し、相手の目の前に現れて直接打撃を仕掛ける。
相手からすれば、ボールの存在自体が脅威となる。

何よりも、ヴェノム自身の洞察力が飛びぬけていた。
戦闘になってから僅か数分で、相手の動き、癖、弱点などを全て看破してしまうのだ。
最初は様子見と言った感じの戦い方ではあったが、
相手の動きを見切った途端に攻撃的になり、敵の攻撃を掠らせもせずに、圧倒してしまう。

そんな彼の戦いぶりは、傍観しているアパーシャにただ「すごい」と言わせるばかりであった。





背丈の低い草がさわさわと生い茂る、緑が一面に広がる草原。
全方位を遠くまで見渡せて、仮に敵が接近して来たとしてもすぐに判る。
一陣の風が駆け抜け、生い茂る草を万遍なく薙いで行き、ざわざわと涼しげな音を奏でた。

そんな草原の片隅に、アパーシャとヴェノムがいた。

アパーシャは手頃な岩場に座り込み、目を閉じ、両手を組み置いて、静かにじっと佇んでいる。
そしてその周辺では、冷たい冷気が穏やかに渦を巻き、彼女を取り巻いていた。
冷気は彼女の呼吸に合わせるかのごとく、たおやかな波を描き、しかし少しずつ力強さを増していった。

強めの風が突如として吹き、アパーシャの長い髪を勢い良く乱した。
だが彼女は動じる事もなく瞑想を続け、周囲の冷気もただゆっくりと流れを保ったままであった。


「そうだ、もっと精神を集中させろ…心を無にして法力の流れに同調し、一体化しろ。」


ヴェノムがすぐ傍から見守り、静かな声で指示を出す。
アパーシャも瞑想を続けたまま指示を仰ぎ、目に力を込めてさらに心を静める。
再び強めの風が吹いて、ざわざわと言う音が耳に纏わりついた。

そして次第に、彼女を取り巻いていた冷気が次第に氷の結晶を孕みだし、流れが目に見えて速くなった。
層も厚くなり、さながら小規模の冷気の竜巻が発生したかの様な錯覚を覚えた。

「……よし、もう其処でやめておけ。」

ヴェノムの声を聞いて、アパーシャは不意に目を開け、精神の集中を解いた。
同時に彼女を取り巻いていた竜巻も自然に消滅していき、直後に草原の風が舞い込んできた。


「思った以上に飲み込みが早い、資質も優れている。訓練次第では、優秀な法術士になれるだろう。」

ヴェノムがアパーシャの法術の鍛錬に対し、良い評価を出した。

「…そう?」

アパーシャは珍しく、どこか照れくさそうな表情を浮かべる。
それとなく髪を書き上げ、俯いた。

「とは言え、この程度ではまだまだ実戦に耐えうるモノではない。
 もう少し訓練を積めば、未熟な賞金稼ぎぐらいなら十分に撃退は出来るだろうが…」

「……」

「法術だけ重点的に鍛えても、戦いには勝てない。
 手練れの者であれば、すぐに君との距離を詰めて接近戦に持ち込み、君に法術を使わせなどしない。
 実際に私が君と戦うとしても、そうするだろう。」

「…うん……」

「それに法術が全く効かない敵と言うものも、必ず存在する。
 あの廃都市で君を襲ったあの男が…その良い例だ」

思えば、あの男には法術が全く効いていなかった。
ドッペルゲンガーだから、実体を持ったモノではないからだとヴェノムは言っていたが、良く判らない。
…何にせよ、あの男は何らかの目的を持って、再び私の前に現れるのだろうか?

「それだけの法力だ、戦いに於いて最大限に活用するに越した事はない。
 だが、何らかの理由で法術を封じられたとすれば、君が頼りに出来るのはその剣だけだ」

それとなく、アパーシャは自分の両腰にぶら下げている双刃剣のパーツに目を落とす。
2日前の夜に、ヴェノムがこれを見事に使いこなしていた光景が思い出された。

「ところで、身体の傷はもう大丈夫なのか」

応急処置としてアパーシャの上半身一帯に巻かれた包帯は、十分に血を吸って赤黒く染まっていた。
昨日までは身体を動かす毎にズキズキと鋭い痛みに襲われていたが、今では意識する事も無い程に回復した。

「痛みは大分マシになったけど…完治はまだみたい」

「驚いたな、この短期間でそこまで回復するとは。まあ、それはそれで都合が良い。」

最後の意味ありげな言葉に、アパーシャは怪訝な表情を浮かべる。

「都合がいいって何が?」

「君は法術の素質はあるが、武器を使っての接近戦に関してはからっきしだ。
 こういうものは、口頭で教えるよりも身体に覚えさせるほうが早い。さあ、その剣を抜くんだ」

何とも突然であった。
今、身体の傷は完治してないと言ったばかりなのに…

「ああ、勘違いするな。実戦での基礎的な構えなどを一から教えるだけだ。何も実際に戦うわけではない。」



アパーシャは双刃剣を組み立て、ヴェノムの前に立った。

「まず、武器を構える際に重要な事は、咄嗟に相手の行動に対応出来る事と、死角を作らない事。
 …とりあえず、君なりに武器を構えてみろ」

アパーシャは両手で双刃剣を持ち、身体を横に向けて構えた。
その様子はヴェノムから見れば何とも隙だらけで、思わず首を傾げてしまう様なものに写った様だ。
これは指導のやり甲斐があるかも知れぬと、ヴェノムは感じた。

「ダメだ、それでは大きな死角が出来てしまう。
 それに両手で武器を持っていては、素早く剣を振るう事が出来ない。」

早速、ヴェノムの細かい指摘が入る。
だがアパーシャは文句も言わずに一つ一つを聞き入れて、自分の構え方を修正していく。

「その剣は片手で持った方がいい。腰の後ろ辺りに控えさせておくんだ。
 左手で法術をいつでも使えるようにスタンバイさせておき、相手を威嚇する様に意識しろ。」

一通りの指導が終わると、双刃剣を持って構えるアパーシャの姿は、それなりに様になった。
腰を落とし、双刃剣は右手で持って後方に携え、胸の前に出している左手では冷気が大きく渦を巻いている。

「ふむ…形は良くなったが、まるで覇気がないな。
 私と敵だと思って、眼力だけで私を圧倒するつもりで見てみろ。
 精神面で負けてしまっていては、勝てる戦いも勝てんぞ。」

アパーシャは構えを保ったまま、眼に力を込めてヴェノムを睨み付けた。

「ただ睨むだけではない。心を鎮め、相手の動きをじっくり見る事を意識するんだ。」

「……」

「そうだ、大分良くなってきた。…よし、構えを解いてもいいぞ。」

指示に従い、アパーシャは緊張の糸を切らして構えを解いた。
慣れない事をしたからか、直後にふうと大きな溜息を一つついた。

「とりあえずのところは、今みたいな感じで良いだろう。
   ただ、そこから的確な判断を下し、迅速な行動を取れるか否かは君次第だ。
 こればかりは、実戦を積んで自分で培っていかねばなるまい」

「…うん」

「あと、その武器は非常に扱いが難しい。
 まして全くの素人である君がそれを持って戦うのは通常では考えられんが…。
 傷がまだ完治していないのなら、その武器の扱いに関する指導はお預けだ。
 当面の間、法力のコントロールと今の構えを身体に覚えさせることに専念すればいい」

「わかった」

「…ああそうだ、一つ君にやってみて欲しい事がある。」

双刃剣を収納しようとしていたアパーシャを、ヴェノムが引き止める。

「…何?」

「これは法術の応用の一つなのだが…君なら出来るかも知れん」

法術の応用?
アパーシャはいまいちピンと来るものがなく、不思議そうな表情を浮かべた。

「術者の法力を武器を媒介に宿らせて様々な効果を生み出し、戦闘能力を向上させる技術。
 俗に言うエンチャントスペルだ。」

「エンチャントスペル…?」

「なかなか難しい技術だが、体得すれば非常に強力な武器となる。
 君の法力でやったならば、接近戦の弱さを大幅にカバー出来るだけの効果が得られるはずだ。」

「……」

「どうだ、やってみるか?」

ヴェノムの問いに、アパーシャは少し考え込む。
だが再び口を開くのに、そう時間が掛かる事はなかった。

「…やってみる。どうすればいいの?」

「まず、先程と同じ要領で法力の流れを操る事から始まる。やってみろ」

指示に従い、アパーシャは双刃剣を両手で持ち直し、前に突き出して眼を閉じ、瞑想を始めた。
すぐに彼女の法力が具体化され、冷気が発生して周囲を取り巻いた。

「そう、そして今度は血液の循環とシンクロさせるように、法力を体内に巡らせるんだ。」

「……」

これは何とも難しい指示であった。
いまいち感覚が掴めず、順調に操れていた法力の流れが乱れを見せる。

「ここが最初の難関だ。肩の力を抜き、自然体を意識しろ。コツさえ掴めば、君ならすぐに出来る。」

アパーシャは眼に力を込め、一層集中して法力の制御に努める。
次第に、まだ雑ではあるが、法力が彼女の身体を撫でるように流れ、身体中を循環する様になってきた。

「そうだ…今度は循環の経路に持っている武器も組み入れ、法力を巡らせるんだ。
 外部から法力を注入するのではなく、手の内を通して武器の中へ注ぎ入れるように意識しろ。」

「……」

後者の指示が思い通りにいかず、僅かな苛立ちが生じる。
それに伴い、上手い具合に出来ていた法力の循環も再び乱れてしまう。
一度乱れた流れを修正するのは意外と難しく、それに神経をどうしても割いてしまう。

「はぁっ……」

集中力が続かずに、思わず法力の制御を止めてしまった。
同時に制御を離れた冷気がバラバラに拡散され、自然と大気の中へと消滅していく。
再び大きく息をつき、少し息が上がっているのが理解出来た。
ちゃんと出来なかった事を悔やむアパーシャに、ヴェノムが言葉をかける。

「気に病む必要などない。始めてやってあそこまで出来たのだ、上出来だ。
 一度に多くを求めると逆に何も得られぬものだ、時間をかけてモノにすればいい。」

「…うん…」

「では、鍛錬はこの辺で置いといて、先を進む事としよう」

ヴェノムは淡々とそう言葉を残し、出発の準備を手際よく始めた。

「(確かに素晴らしい法力の資質を秘めているが…果たして何者だ? 
  このまま行けば、熟練した法術士でも使い手の少ない召還ですら、やってのけるかも知れん。
  いずれ脅威となるとも限らんが、果たしてどうしたものか…)」

ヴェノムの胸中で複雑な心境が展開されているのは露も知らず、
彼の背後ではアパーシャがまだ何処か憂いの表情を浮かべていた。





「ふむ、ローヌ川か」

ヴェノムとアパーシャが長い道則を経て出た場所は、幅の広い川が大らかに流れる川原だった。

「ローヌ川?」
「フランスの南部から地中海に流れてる川の名前だ。スペインとイタリアを結ぶ中間地点とでも思えばいい。」


中間地点…イタリアまで、今までのと同じぐらいの道則があるのか。
今振り返ってみれば、マドリードに辿りついてからというもの、前途多難な旅路だった。

快賊団団長を名乗るジョニーと言う男性から、自分に賞金が掛けられている事を宣告されて、
次に廃都市で全く正体も判らぬ謎の男に襲われて、有無を言わさず命の危険に晒された。
そしてこのヴェノムと言う男性に助けられ、現在こうやって一緒に行動している。
何とも変化のない、均質な中身であったそれまでの旅が、急激な変化を伴っている事に、正直困惑していた。

「…む、あれを見ろ」

ローヌ川を跨ぐ大きな橋を横断している途中であった。
ヴェノムが前方に何かを発見し、アパーシャに注意を促した。

「…?」

アパーシャは言われて前方遠くを眺める。
なだらかな街道が果てしなく続く平野、その遠くの方で、何やらテントが群れているのが見える。
何処かの部族の集落?それとも、何処かの国がこんな場所に関所でも設けたのだろうか。
―――いや、どうやらそのどちらでもなさそうだ。
二人の行く先にあるものが何なのか、アパーシャにも理解出来てきた。

「行商隊のバザー?」

「そうらしい。この道を通る旅人を相手に、商売を一時的にやっている様だな。」

二人が歩いてゆくにつれ、バザーがどんどん近くなる。
遠くから見ていた時は判らなかったが、その規模はかなりのもので、小さな商業都市とか見紛う程だった。
数多くの商人達で賑わい、旅人も数多くあのバザーを休憩地点として利用している様だ。

「丁度いい機会だ。あのバザーでお色直しをしておけ」
「…えっ?」

彼女の前方を歩いているヴェノムが、不意に声をかけてきた。

「そんな格好では、これから先訪れるであろう街の中を、とても歩けたものではないだろう?」

そう言われてアパーシャは、自分の服装に目をやってみた。
上半身は、あの時の大怪我のために包帯でぐるぐる巻きにされて、その大部分が血で赤黒く染まっていた。
ズボンにもその鮮血が幾分が掛かっており、こびり付いていた。

成程、確かにこんな血まみれな格好では、街中で目立って仕方ないだろう。
アパーシャはそんな事にも気付かなかった自分が何処か可笑しくなり、顔を俯けた。

「服を買うだけの金は持っているか?何なら、少しばかり貸してやってもいいが」

「…いや、大丈夫」

「なら、バザーへ入る前にその長い髪を上げておいた方がいい。
 あの中に君の手配書を見た賞金稼ぎがいないとも言い切れんのでな、
 髪型を変えておくだけでも、案外バレにくいものだ。」



バザーに入ってみると、やはり人が多く、活気付いていた。
街道に沿って露店がずらりと並び、ずっと奥まで続いていて、品揃えも思ったより豊富だった。
アパーシャはさっき言われた通りに髪を後ろでまとめ、上へ上げていた。

「ふむ、感じは変わったが、あくまでも気休めだと言う事を忘れるな」

「…うん」

「では、しばらくの間別行動を取る事としよう」

「えっ?」

別行動?突然言われると、流石に戸惑いが生まれる。
アパーシャが何故かと問うと、ヴェノムはこう答えた。

「何故って、君の服を見るのに私がついていく必要はあるまい?
 私は今後の食料を調達しておくから、向こう側の出口で落ち合おう。」

「……うん」

「あと、君は賞金首だ、それは忘れるな。
 出来る限り目立たなくて、動きの妨げにならない様な服を選ぶ事だ」

ヴェノムは最後にそう言い残し、バザーの中へと消えていった。
一人取り残されると、やはりどこか心細い感じがしてならないと、アパーシャは改めて思った。
とは言え、前に進まないと始まらないし、
こんなボロボロの服では尚更賞金稼ぎ達の目に留まってしまうだろう。
アパーシャは勇気を出し、人がざわめくバザーの露店の通りへと後に続いて歩いていった。


程なくして、前方の右手に手頃な衣服の露店が眼に入った。
店主と眼を合わさない様にして、女性用の衣服が置いてある一角に隠れるように入り、服を眺める。
彩色の華やかな服からエキゾチックな民族衣装風のモノまで、露店にしては非常に品揃えが豊富だった。
思わず、柄にもなく次から次へと目移りしてしまう。

アパーシャは、お洒落とかそう言ったものにあまり気を回す様なタイプではなかったが、
いざ自分が着る服を選ぶとなると、やはりどれにしようか迷ってしまう。
ヴェノムは目立たない服を選べといっていたが、そうなると寒色系の地味なものがいいのだろうか?
でも、自分にはきっと暗めの色の服は似合わないと思うし、でも暖色だと目に付きやすいし…
何だかんだと考えているうちに、時間はどんどん過ぎていった。


アパーシャと別れてから、40分程経っていた。
ヴェノムは既に食料の調達を終え、予定通りバザーの出口にいた。
ここに到着してから、もう20分程経っている。
だがヴェノムは根気良く、アパーシャが来るのを待っていた。

アパーシャとて女性だ、服を選ぶのに時間をかけるのは自然な事だろう。
それとも、何かのトラブルに巻き込まれてなければ良いのだが…
極端に遅いのであれば、彼女を探しにもう一度バザーへと戻ってみようか。

「…む」

そんな事を思っていた頃合に、バザーの人ごみの中からアパーシャが歩いてくるのが見えた。
あの水色の髪は遠くからでも判りやすいが、
賞金稼ぎからも判りやすい目印となってしまうのもまた事実だろう。
とは言え、敵が寄ってこなければ、彼としてもアパーシャと一緒に行動している意味がなくなってしまうが。

アパーシャはボロボロになった以前の服と打って変わり、
上は長袖の純白のブラウスに、下はベージュ色のジーンズとシンプルな服装になっていた。
両腰には以前と同じく、2分された双刃剣のパーツを納めた鞘をぶら下げている。
バザーに入る時に上げた髪はそのままで、
自前の大人しそうな雰囲気と相まって、非常に知的で凛と美しく、清楚な雰囲気を醸し出していた。
賞金首だとか戦いとか、そう言った物騒な単語とは、まるで無縁に見えた。

「ほう、さっきまでとは大分雰囲気が変わったな」

ヴェノムが素直な感想を述べると、
「そう?」と適当に生返事を返しながら、アパーシャは少し照れ臭そうに俯く。

「では、そろそろ出発しよう。とりあえずは、イタリアのジェノバを目標に進んで行くか」

「…うん」

「君の傷が完治したら、トレーニングの密度を今より濃くする。そのつもりでいろ」

ヴェノムがゆっくりとバザーに背を向け歩き出した。
少し距離を開けて、アパーシャもその後ろをついて行く。

―――果たして、私は無事にイタリアまで辿りつけるのだろうか?

不意にそんな考えが脳裏に浮かんできたが、無意識の内に思考の外へと追いやっていた。