昨夜の任務を負え、希梨華は久々の休暇にありつけた。
こう言った仕事の性格上、休暇と言うものは必然として不定期であり、
そしてここ最近は任務が立て続けであったため、実を言えば疲労はかなりのものであった。
この休暇も、いつ急な任務が飛び込んできて台無しになるか判ったものではない。
自宅へと帰ったら、ただ全力で酷使した身体を休めようと言う事だけで希梨華の頭の中はいっぱいだった。

汗と返り血でぐしょぐしょになった戦闘服は脱ぎ捨て、
無地のシャツにジャケット、ジーンズと言う何ともラフな私服に着替え、
ショルダーバッグを肩から下げ、ウォークマンで好きなアーティストをガンガン聴きながら、
希梨華は夜の住宅街を一人で歩いていた。
時刻は午後9時過ぎ、さっきまで明るかったのにいつの間にか陽は沈んで、あちこちの街灯が寂しげに明かりを灯している。
昨夜の餓醜鬼との戦いでのダメージが響いて、
メディカルルームにしばらく居たのが原因で帰宅の予定が大分遅くなってしまった。
治安の悪いこの時世、若い女性が夜道を一人歩きと言うもの何とも危険なものではあるが、
彼女の場合はどんな暴漢が現れようとも返り討ちにする事だろう。

やがて、希梨華は住宅街の中でそびえたつ、とある高級マンションに辿り着いた。
外観も去ることながら、壁や床も大理石で敷き詰められ非常に優雅な雰囲気を醸し出している。
規模も非常に大きく、警備も万全を期していると評判のマンションである。
希梨華は歩を止めることなくそのまま中へと入って行き、
入り口の所にまとめて設置されているポストに何も入っていない事を確認し、再び歩き出す。
突き当たりにあったエレベーターの前で立ち止まり、開閉ボタンを押す。
しばらくして扉が開き、中に誰も入っていなかったのを確認してから中へ入り、
迷わずに7階のボタンを押して、手早くエレベーターの扉を閉めた。
7階に着くまでの途中、何度か別の階で止まり、
その度に顔だけは何度か見た事のある住人が中へと入ってくるが、
最初に視線をそれとなく送るだけで、それ以降特に会話も何も無い。
やがて目的の7階に着き、扉が開くと同時にさっさとエレベーターを降り、右へと曲がって歩き出す。
長い廊下の中腹あたりにある、一室のドアの前で立ち止まる。
ドアの中央には『715 法条』と、希梨華の姓が書かれた表札と、
ドアの横にはカードキーを読み込むためのリーダーと思しき物々しい機械が取り付けられていた。
希梨華はショルダーバックに手を伸ばし、カードキーを手馴れた手つきで取り出す。
そしてそれをカードリーダーにすっと通し、
続いてリーダーの下にあった小型のディスプレイにカードキーを持つ右手の親指を押し付ける。
間も無く、リーダーが登録者の指紋データを正しく読み取り、
『ピー』と言う機械音とともに目の前のドアのロックを解除した。



ドアをガチャリと開け、同時に『ふう』と大きな溜息をついた。
『久々に自宅に帰ってきた』と、ほんの少し張っていた心がほころぶ。
奥に見えるリビングのドアから、明かりが漏れているのが見えた。
そして足元には、希梨華のものではない赤いハイヒールが一対、きちんと並べて置かれている。
どうやら、誰かが既に中にいるらしい―――とは言え、
さっきチェックしたポストに、いつもは溜まってるはずの新聞が無かった事から誰かが居るのは判っていたし、
中に居るのが誰であるか、希梨華にとっては考えるまでも無かった。

家の中に上がり、脇に置いていたスリッパを履いて廊下を奥へと進む。
リビングへと続くドアのノブに手を伸ばし、ドアを開けて中へ入る。
すぐに、このリビングにいる先客が目に入った。
部屋の中にあるパソコンの前に座ってじっとディスプレイを睨み、黙々とタイピングをしている。
希梨華はそれを見て、これと言ったリアクションも見せずにその後ろ姿に声をかけた。

「望美、帰ってたんだ」
「・・・あ、お姉ちゃん、お帰り。」

先客が、希梨華に気付いて振り向く。
女性だった。
眼鏡を掛け、長い髪をうなじの辺りで結わいて、知的な雰囲気を漂わせている。
そして特筆すべきは、顔立ちは希梨華と瓜二つである事。
何とも質素な服を着ていて、身だしなみにも無頓着な印象を与えるが、
希梨華と同じ様に顔立ちは整っている・・・と言うよりも希梨華と顔は同じで、
知的な雰囲気も手伝って、女性としての魅力は十分持ち合わせていた。
『法条 望美』―――希梨華の双子の妹で、両親を亡くして以来、彼女の唯一の肉親である。

「珍しいね、望美が家に居るなんて」
「うん、研究の方が一段落ついたからね」

希梨華はテーブルにショルダーバッグを置き、ずっと掛けていたウォークマンのイヤホンを外す。
続いて椅子に座り、再び安堵の溜息をついた。
望美はパソコンの前を離れ、希梨華がいるテーブルの後ろにあるキッチンデッキへと向かう。

「お姉ちゃん、コーヒー飲む?」
「いや、アタシすぐ寝るからいいよ。ココアない?」
「あるよ。入れるね」

しばらく、沈黙が訪れる。
希梨華は手近にあったテレビのリモコンに手を伸ばして、スイッチを付ける。
夜のニュース番組が放送されていて、『医薬企業フェリウス壊滅』の事件について報道されていた。
望美が自分のコーヒーと、希梨華のココアをトクトクと入れる音が、後ろから耳に入ってきた。

「お姉ちゃんこそ、家に帰ってくるなんて久しぶりじゃない」
「・・・久々の休みだからねぇ。」

望美がコーヒーカップを両手に持ち、キッチンから戻ってくる。
そして希梨華の向かい側の椅子に座り、ココアの入ったカップを希梨華の前に置く。

「・・・お姉ちゃん、また、人を殺してきたの?」
「『フェリウス』ってあるでしょ、あの薬作ってる会社。あそこ潰してきた。ほら、今テレビでもやってるでしょ。」

そんな事を平然と言い払う希梨華に、望美は表情をこわばらせる。
彼女としては、姉が平気で人殺しをしていると言う事が、正面から受け入れる事が出来なかった。
しばらく口を閉ざしていたが、目の前の姉を正面から見据える。

「ねえ、お姉ちゃんは、人を殺す事を何とも思わないの?」
「そんな事考えてる暇なんて無いのよ。相手の事を考えてたら、死ぬのは自分だし。」
「・・・・・・そっか、そうだよね・・・。」

望美は言葉に詰まって、黙り込んだ。
自分が入れてきたコーヒーの水面を見つめながら、ただ呆然とする。
そんな様子を見て希梨華は、すかざず口を開く。

「望美。アタシ達が殺してるのは、重犯罪者、それと異形だよ。
 そいつらを殺す事で、結果として他の沢山の人達の命を救う事が出来るの。
 何の目的も無く、ただ快楽殺人をやってるワケじゃないの。」

「それは判ってるけど・・・・・・」

「アタシ疲れてるんだから、もうこの話はやめにして」

「・・・うん。」

二人の間に、気まずい沈黙が流れる。
希梨華は目の前のカップを手に取り、ココアを少し口の中に注ぐ。
生まれてから今までずっと一緒に暮らしてきたのだ、希梨華だって望美が何を言いたいのかはわかっている。

「ねぇ、望美。明日は空いてるの」

希梨華は頬杖をついて、目を泳がせながら望美に尋ねる。

「いや、今回の研究の結果をまとめて、次の実験に向けてフィードバックしなきゃいけないの。
 明後日また出かけなきゃいけないし、明日はそれでまる一日潰れる。」

「そう・・・わかった。」

「明日、何かあるの?」

「ここんとこ、父さんと母さんの墓参り行ってなかったじゃない?
 予定が空いてるなら一緒に行こうって思ってたんだけど・・・何とかして、時間作れない?」

「今回のものすごい量だから、ホント一日中パソコンの前に座ってなきゃ間に合わないの・・・。
 ごめん・・・また、お姉ちゃん一人でやっといてくれるかな・・・。」

望美が拝むように両手を合わせて、希梨華に悪びれた様子で頼み込む。
『しょうがないなぁ』と生返事を返し、希梨華は再びココアを口に注いだ。

「でも望美、ちょっとはリラックスしてやりなさいよ。
 そんな仕事熱心な調子でずっと働き続けてたら、ホント身体壊すよ。」

「・・・そんなの、お姉ちゃんに言われたくないよ。
 お姉ちゃんの仕事なんて、いつも死と隣り合わせじゃない・・・。」

望美から返ってきたその言葉に、希梨華は思わず黙り込んだ。
頬杖をついたまま手に持っているコーヒーカップをゆらゆらと揺らし、ココアの水面が波打つのを何となく眺める。

「お姉ちゃんが『任務だ』って出かける度に、私いつも心配してるんだから・・・
 父さんと母さんが死んで以来、ずっと二人で頑張ってきたのに、
 今度はお姉ちゃんにまで居なくなられたら、私一人ぼっちになるんだよ。」

「アタシの悪運の強さはアンタも知ってるでしょ。
 そう簡単には死なないから。望美は望美のやるべき事だけに集中してればいい。」

「そんな気休め程度に言わないでよ」

「・・・じゃあ、望美はアタシにどうして欲しいの。
 今の仕事辞めて、こんな社会情勢の中で就活でもしろって言うの?」

「いや・・・そういう事じゃないけど・・・」

希梨華の反論を受け、望美は返す言葉がなくなる。
しばらくの間を置いた後、黙り込む彼女に希梨華が再び声を掛ける。

「いい、望美、アタシはその道のプロなの。絶対にアンタ一人を残して死んだりしないから。約束する。」
「・・・・・・」

表情が晴れないまま、望美は手元のコーヒーを啜る。

「約束するからには、絶対に守ってよ?」
「当然じゃない。アタシが今まで望美との約束を破った事なんかないでしょ。」
「・・・じゃあ、約束だよ。お姉ちゃん、絶対に死んじゃ駄目だよ?」
「言われなくても判ってるって」

それを聞いた望美は少し表情を綻ばせ、自分のコーヒーカップを持って立ち上がった。
先程からつけっぱなしにしていたパソコンの方へと言った後、パソコンの前に座り込んで再びタイピングを始める。
希梨華も続いて立ち上がり、横に置いてあったショルダーバッグと、飲みかけのココアのカップをそれぞれ持つ。

「じゃ、シャワー浴びて寝るから。望美も無理しちゃ駄目だよ。」

望美が『判ってる』と曖昧な返事を返してきたのを確認して、
希梨華は多少呆れた顔を見せつつも、奥にある自分の部屋へと入っていった。

――――――ホント、子供なんだから。





2日後、横浜郊外、新墓地。

昨日、希梨華は仕事の疲れから丸一日寝ていて、墓参りに行くことが出来なかった。
望美は昨日の内にやる事を済ませ、今朝再び出かけていった。
二人とも多忙で、両親の葬儀はおろか墓参りにまで二人そろって出向けないなんて、何と親不孝な娘達だろう―――
両親の遺骨が埋葬されている墓の前で、希梨華は心の中でそう嘆く。

墓地の周辺は住宅街で、墓地内には希梨華以外には誰も居ない。
9月の残暑は例年通りの暑さで、昼下がりの空は雲もなく晴れわたり、
蝉達のやかましい鳴き声はまだまだ耳にまとわりつきそうである。
以前から備えてあった花は見る影もなく枯れていて、墓の周辺にも雑草が無数に生えていて、
どれだけの間、この場所へ来ていなかったのかがよくわかる。

好き放題に荒れている墓の周りの除草を行った後綺麗に清掃し、
枯れていた花を新しいものに取替え、最後に線香に火をつけ、墓前に供える。
暑い中での作業で、全て終わる頃には希梨華の額にもじんわりと汗がにじみ出ていた。

そして後片付けを終えた後、希梨華は墓前に屈みこみ、両手を合わせて拝む。
直後に自分が備えた線香から、独特の匂いを持つ煙が香ってくる。

―――父さん、母さん。アタシも望美も元気だよ。
出来れば望美も一緒に連れてきたかったんだけど、ごめんね。今度、あの子も連れてくるからね―――

希梨華はしばらく拝み続けた後、ゆっくりと立ち上がる。
依然として、住宅街は物静かで9月の蝉の鳴き声しか聞こえない。

次の部隊の訓練日まで、特にこれと言った予定はない。
ここしばらく任務続きで味気のない軍用食ばかり食べていたから、
久々に街へ出て、何か美味しいものを食べるのもいいかも知れない。

―――――ん。」

ズボンのポケットに入れていた携帯電話が、ブルブルと震えるのを感じた。
誰からだろうとも思わず、希梨華は携帯をポケットから取り出す。

『着信 桜庭』

マルチディスプレイには、そう表示されていた。
桜庭と言えば、先日のフェリウスでの任務の際に、一緒に社長を追撃していた男性である。
同じ小隊に属していて、やたらと声を掛けられる。

―――そう言えば以前、携帯の番号を聞かれて教えた事があったっけ。何の用だろうか。

そう思いつつ、希梨華は電話に出る。

「はい」

《ああ希梨華、すまんな突然》

「何?何か用?」

《せっかく休みなんだし、たまには食事にでも誘おうかなー、とか思ったんだけど。今どこ?》

「横浜の墓地。アタシも丁度、どっかでご飯食べようかなって思ってたところ」

《へぇ、そうなんだ。じゃあ一緒に飯食う?いい店知ってるんだけど》

「別にいいよ。どこかで待ち合わせでもするの」

《じゃあ、3時に渋谷の駅の改札あたりでどうだ?》

「うん、それなら間に合いそう。じゃあ、また後でね」

《ああ。》

会話を終え、希梨華は電話を切る。
丁度いいタイミングで、食事のお誘いが来たものだ。





東京・渋谷。
先の大戦による傷跡も殆ど癒え、多くの若者が集う街である事は今も昔も変わらない。
日中はどこも人ごみで賑わい、活気に溢れざわめきが絶えない。
そんな大通りの脇にある、一軒のイタリア料理店。
イタリアをイメージしたシックな雰囲気の店内は、自然と来訪者の心を静め、ついつい長居させる。
食事に誘われた希梨華は、桜庭と一緒に店内の隅で向かい合って料理を食べていた。

「どうよ、この店なかなかいいだろ。」

注文した料理を食べながら、桜庭が得意気に希梨華に語りかける。
思えば、ずっと任務の時にしか顔を合わさなかったから、私服姿の桜庭を見るのはこれが始めてかも知れない。

「うん、悪くないね。久々に美味しいもの食べたって感じ。」

希梨華はカルボナーラを注文して、じっくりと味わって食べる。
桜庭によれば、以前にテレビで紹介された事もある、隠れた名店だそうだ。

「日頃の任務でお互い頑張ってるしな、前々から食事に誘おうって思ってたんだよ。」
「そっか、ありがと。アタシも乾斗クンにおごる時、ここにしようかな」
「乾斗ねぇ。あいつも頑張ってるし、よく気が利くしな。」
「ところで桜庭、これ、アンタのおごりよね。」
「ん・・・ああ、一応俺が誘ったんだしな。」
「じゃあ、追加注文しても文句言わないでよ。」
「・・・頼むから程々にな。」

表情にはあまり出していない様だが、希梨華も喜んでくれているようだ。
桜庭も内心満足気に、注文を追加した。

「ねぇ、ここ最近任務の数が増えてきてない?」

希梨華が、唐突に話題を振ってきた。

「ん?ああ、明らかに増えてるな。」

「アタシ達が動くのは、表の国家権力じゃ手に負えない犯罪者集団とか異形とかが発生した時じゃなかったっけ。
 ほんと、今時の警察なんてたかが痴れてるわね」

「今の政府は苦しい状態だし、確かに治安も悪化してタチの悪い犯罪も増えてきている。
 それに異形の相手だって警察じゃせいぜい危険度Cランクの奴が限界だろ。俺達への需要が多くなるのは必然じゃねえの」

「だったら、もうちょっと給料あげてくれたらいいのに。そしたら普段の生活にももっと張りが出てくる。」

「・・・そういや、希梨華ってさ」

桜庭が何かを言おうとした矢先、先程二人が追加注文した料理が運ばれてきた。
それによって一旦二人の会話が中断されるが、店員が向こうへ戻っていったのを見た後、すぐに再開される。

―――で、今何言おうとしてたの?」

「ああ、希梨華ってさ、双子の妹いたんだっけ。」

「望美?うん、いるけどそれがどうかしたの。」

「政府管轄の研究機関で、異形の生態学の研究やってんだっけ?
 こないだ顔見かけて、ホント希梨華と似てるなぁて思ったからさ。」

「双子なんだから、似てるのは当たり前でしょ。」

「まあ、そうだけどな。今、二人で暮らしてるんだっけ?」

「暮らしちゃいるけど・・・あの子もあの子で忙しいみたいだし、殆ど顔合わす事はないわね。
 会ったら話はするけど、あの子ホントに子供だから、たまに鬱陶しい時もある。」

希梨華のその言葉を最後に、会話が途切れる。
桜庭は生返事だけを返し、黙々と料理を食べ続ける。
そんな妙な空気に違和感を感じ、希梨華が戸惑いながら口を開いた。

「・・・何、どうしたの?黙り込んじゃって・・・」

料理の大半を食べ終わった後、桜庭が返事を返した。

「いや・・・死んだ親の事、思い出してさ。」

親と聞いた希梨華は、ついさっき両親の墓参りをしてきた事を思い出し、口を紡ぐ。

「希梨華、こないだの戦争で親を亡くしたって言ってたよな。
 俺もこないだの戦争の時に親が両方とも死んじゃってさ・・・。
 俺一人っ子だったから、今の仕事で収入もそこそこあったし、それから一人で生きてきたんだよ。」

「・・・・・・」

「でも希梨華は、親がいなくなっても姉妹がいて羨ましいな、って思ってただけ」

今度は希梨華の方が黙り込む。
5年前に親が死んで以来、ずっと望美と協力して生活してきたが、そんな風に改まって感じた事はなかった。
何だかんだ言って、望美は唯一の家族なんだな―――

「・・・ごめんね。家族がいるってだけでも幸せな事なのに」
「あ、俺こそすまん、こんなしんみりした空気にするつもりじゃなかったんだけど。
 まあアレだ、妹を大事にしてやれよってこった。」

次の瞬間に、桜庭が急にハッとした表情になる。
おもむろにポケットから携帯を取り出し、ディスプレイを見る。
そして直後に、露骨に気が滅入った様な表情を浮かべ、溜息をついた。

「何、誰からのメール?まさか峰?」
「峰さんだ。明日の午後4時、ブリーフィングルームに集合だってよ。」
「・・・ウソ、また任務?」

希梨華も続けて、同じ様にゲンナリとした表情を見せる。

「ああもう、せっかくの料理が不味くなるじゃない・・・アタシのケータイにも同じメール来てたし。」
「ま、明日だしな。とにかく今はメシ食おうぜ」

こういう時に、こんな前向きな性格の人間は強いものだと希梨華は感じる。
ここは一つ、そのプラス思考を見習ってみようか。

「・・・そうだね、もうちょっと食べようか。支払いは桜庭だし」

すぐに立ち直った桜庭の表情に、再び陰りが見えた。